「野箆坊」(野篦坊)
「嗚呼、何時も見ている筈の私の顔が思い出せない。
「啊、明明一直看着卻無法想起我的臉。
此れは誰で、彼れは誰で、其れは誰で、私は誰で…。」
這是誰、那是誰、那是誰、我是誰……。」
音の無い言の葉を貪っては喰い散らかした
貪戀無聲的話語 以揮霍盡
吐き出す真っ赤な嘘 紅させば饒舌
撒下彌天大謊 若添油加醋便是多嘴多舌*
戯言も命吹き込めば真 故に世迷えば皆右を向くばかり
若為讕言賦予生命亦能成真 故若在世間迷失 眾人皆模仿他人
只「居る」だけで良いのです 寧ろ「在る」だけでも良いのです
只是「存在」便好 不如只是「存在」也可以*
背中押され、手を引かれるでしょう ほら…
被從後一推、被牽手引導吧 看……
父の種子で孕んで母の穴から這い出でて
以父親的種子孕育 從母親的孔道爬出
知らぬ名を与えられて生かされた私は誰?
被授予不熟悉的名字 被養活的我是誰?
私が私で無くなる様に 貴方が誰でも構わぬ様に
就像我不再是我般 就像不在意你是誰般
溢れた嘘を塗りたくれば
若胡亂塗抹無數的謊言
「お初にお目に掛かります」
「幸會」
私が誰かの化けの皮で ひん剥き晒せば何処の何方?
我是誰的假面 若撕下展露 為哪裏的哪位?
嗚呼 正に理
嗚呼 正是此理
誰かが「私」を生きる様に 誰かが「貴方」を生きる様に
就像誰活成「我」 般 就像誰活成「你」般
塗れた嘘を塗りたくれば
若胡亂塗抹已抹上的謊言
「お初にお目に掛かります」
「幸會」
私も貴方も何処の何方もひん剥き晒せば皆同じ顔
我也是你也是哪裏的哪位也是 若撕下展露 大家同樣的臉
嗚呼 正に野箆坊
嗚呼 正是野篦坊
「嗚呼、何時も見ていた筈の貴方の顔が思い出せない。
「啊、本應一直看着卻無法想起你的臉。
此れは私、彼れは私、其れは私、貴方は誰…?」
這是我、那是我、那是我、你是誰……?」
此の命を燃やす意味を 此の命を絶やす意味を
燃盡此命的意義 滅盡此命的意義
指咥え強請り欲しがる
吮指乞請貪求
皿の上に盛り付けられた都合の良い答え
被盛在盤子上 隨便的答案
皿の上に盛り付けられた誰が為の都合の良い私
被盛在盤子上 為了誰呼之則來揮之則去的我
「嗚呼、何時も見ていた筈の私の顔が思い出せない。」
「啊、本應一直看着卻無法想起我的臉。」
溺愛の末路は磨き抜かれた誰か好みの出来合いの私でした。
溺愛的下場便是以考究過的他人之好而成的我。
*註解:
野箆坊:「野篦坊」,外表如同人類但沒有眼、口、鼻的日本妖怪,亦比喻作無主見、無個性之人
紅させば:前句「真っ赤な嘘」為彌天大謊,這裏推測以「染得更紅」以表達「火上加油」「添油加醋」的意思
居る、在る:兩者雖然同樣為「存在」,但可簡單地區分:前者為可動的「存在」、後者為不可動的「存在」,此處應該為表達前後兩句中生物和死物的語感差別
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